手摩乳
- 名前
- 手摩乳【日本書紀】(てなずち, てなづち)
- 手名椎【古事記】(てなずち, てなづち)
- 稻田宮主簀狹之八箇耳【日本書紀】(いなだのみやぬしすさのやつみみ)稲田宮主簀狭之八箇耳
- 性別
- 女神
- 配偶者
脚摩乳 【日本書紀 巻第一 神代上第八段】
- 子
- 称号・栄典とても広〜い意味です。
稲田宮主神 【日本書紀 巻第一 神代上第八段】
- 出来事
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素戔嗚尊は、天から
出雲国 の簸 の川上に降りた。
時に川上で泣き声を聞いた。それで泣き声を尋ねて行くと、一組の老夫婦がいて、中に一人の少女を置いて、かき撫でながら泣いていた。素戔嗚尊が「お前らは誰か。何の為にこのように泣いているのだ」と尋ねると、「私は国神 で、名は脚摩乳と申します。我が妻の名は手摩乳と申します。この童女は私の子です。名は奇稲田姫と申します。泣いているわけは、先に私の子は八人の女 がおりましたが、毎年八岐大蛇 に呑まれました。今この女もまた呑まれようとしております。免れることはありません。それで悲しんでおります」と答えた。素戔嗚尊が「もしそうであれば、お前の女を私にくれないか」と言うと、「仰せのままに奉ります」と答えた。
それで素戔嗚尊は、奇稲田姫を湯津爪櫛 に変えて、髻に挿した。そして脚摩乳・手摩乳に八醞酒 を醸させ、併せて仮棚を八面作らせ、それぞれ槽を一つずつ置いて、酒を入れて待った。
時期がくるとやはり大蛇がやって来た。頭・尾はそれぞれ八つあり、目は赤酸醤 赤ほおずき。赤酸醤。此云阿箇箇鵝知。のようだった。松や柏が背に生えて、八つの山、八つの谷の間に広がっていた。酒を見つけると、頭をそれぞれの槽に落として飲み、酔って眠った。
その時、素戔嗚尊は帯びていた十握剣 を抜いて、その蛇をずたずたに斬った。この後に、素戔嗚尊は結婚する所を探して、出雲の
【日本書紀 巻第一 神代上第八段】清地 清地。此云素鵝。に着いた。そしてそこに宮を建てた。
そして夫婦の交わりをして、生まれた子を大己貴神という。それで「我が子の宮の首長は、脚摩乳・手摩乳である」と言った。そして二神に名を賜って稲田宮主神という。-
【日本書紀 巻第一 神代上第八段 一書第一】
素戔嗚尊は天から
出雲 の簸 の川上に降りた。そして稲田宮主簀狭之八箇耳の女の稲田媛を見て、妻屋を建てて生んだ子は、名付けて清之湯山主三名狭漏彦八島篠という。ここでの稲田宮主簀狭之八箇耳は、父なのか母なのか不明。 -
素戔嗚尊は安芸国の
【日本書紀 巻第一 神代上第八段 一書第二】可愛 の川上に降りた。そこに神があった。名を脚摩手摩という。その妻の名を稲田宮主簀狭之八箇耳という。この神は妊娠していた。夫妻は共に憂えて、素戔嗚尊に言うには、「私が生んだ子は多かったのですが、生むたびに八岐大蛇 がやって来て呑みこんでしまいました。一人も助かりませんでした。今私はまた産むころになり、また呑みこまれることを恐れています。それで悲しんでおります」と。
素戔嗚尊は「お前は果実を集めて八つの甕に酒を醸しなさい。私がお前のために蛇を殺そう」と教えた。
二神は教えに従って酒を設けた。産む時に至り、やはりその大蛇が入り口にやって来て子を呑もうとした。素戔嗚尊は「あなたは恐れ多い神です。おもてなし申し上げましょう」と言った。そして八つの甕の酒を口ごとに入れると、その蛇は酒を飲んで眠った。そこで素戔嗚尊は剣を抜いて斬った。尾を斬った時に剣の刃が少し欠けた。割いて見てみると、尾の中に剣があった。これを名付けて草薙剣 という。
この後、稲田宮主簀狭之八箇耳が生んだ子である真髪触奇稲田媛は、出雲国の簸 の川上に移して養った。 -
須佐之男命は
【古事記 上巻】出雲国 の肥 の河上の鳥髪 という地に降りた。このとき箸がその河から流れ下ってきた。須佐之男命は河上に人がいると思い、尋ねていくと、老夫と老女と二人いて、童女を中に置いて泣いていた。そこで「お前たちは誰か」と尋ねた。それでその老夫は「私は国神 で、大山津見神の子です。私の名は足名椎といいます。妻の名は手名椎といいます。女 の名は櫛名田比売といいます」と答えた。また「お前たちはなぜ泣いているのか」と尋ねると、「私の女はもともと八人おりましたが、この高志 の八俣遠呂智 が毎年やって来ては食っていきました。今まさにその来る時期なので泣いているのです」と答えた。また「その形はどのようなものか」と尋ねると、「目は赤加賀知 ホオズキの古名。のようで、体は一つですが、頭が八つ、尾が八つあります。またその体には蘿 ヒカゲノカズラの古名。、檜 、榲 が生え、その丈は八つの谷、八つの丘にまたがり、その腹を見ると、全てが常に血で爛れています」と答えた。
そこで速須佐之男命は、その老夫に「このお前の女を私にくれないだろうか」と言った。答えて「恐れ入りますが、お名前も存じ上げませんので」と言った。そこで「私は天照大御神の弟である。今、天降ってきたのだ」と言った。足名椎・手名椎の神は「畏まりました。差し上げます」と言った。
速須佐之男命はその童女を湯津爪櫛 に変えて角髪に刺し、その足名椎・手名椎の神に告げて、「お前たちは八度くり返して酒を醸し、また垣を作り廻らし、その垣に八つの門を作り、門ごとに八つの桟敷を作り、その桟敷ごとに酒船を置き、船ごとにその八度醸した酒を盛って待て」と。
その言葉に従い、備えて待っていると、その八俣遠呂智が言葉どおりにやって来た。そして酒船ごとに頭を垂れ入れて、その酒を飲んだ。すると酔ってそこに留まり、伏して寝た。
速須佐之男命は、佩いていた十拳剣 を抜いて、その蛇 を切りに切った。肥の河は血に変わって流れた。その尾の中程を切ったときに、剣の刃が欠けた。不思議に思って、剣の先で刺し割いてみると、都牟刈 語義不詳。の大刀 があった。それでこの大刀を取って不思議に思い、天照大御神に報告した。これが草那芸之大刀 である。 -
蛇は八段に斬られて、段ごとに雷となった。八つの雷は飛び躍って天に昇った。この神はとても不思議であった。
【先代旧事本紀 巻第四 地祇本紀】
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