内膳卿の膳臣大麻呂が安閑天皇の勅を受け、使いを遣わして真珠を伊甚に求めた。
伊甚国造らは京に参上することが遅く、いつまでも献上しなかった。
膳臣大麻呂は激怒し、国造らを捕縛して理由を問うた。
国造稚子直らは恐懼して後宮の寝殿に逃げ隠れた。
春日皇后は見知らぬ者が入ってきて、息をはずませて倒れてしまった。深く恥じること已む無しであった。
稚子直らがみだりに後宮に入った罪は重かった。
謹しんで専らに皇后の為に伊甚屯倉を献上して、乱入の罪を贖うことを請うた。
それで伊甚屯倉を定めた。
今は分けて郡と為し、上総国に属する。
【日本書紀 巻第十八 安閑天皇元年四月癸丑朔条】