菟上王
- 名前
- 菟上王【古事記】(うなかみのみこ)
- キーワード
比売陀君 之祖【古事記 中巻 開化天皇段】
- 性別
- 男性
- 父
大俣王 【古事記 中巻 開化天皇段】
- 先祖
- 出来事
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垂仁天皇が尾張の
相津 にある二股の杉で二股の小舟を作って持ち運び、倭 の市師池 や軽池 に浮かべて、その御子と一緒に遊んだ。
この御子は鬚 が胸元に届くようになっても物を言わなかったが、空高く飛ぶ鵠 の音を聞いて、はじめて物を言おうとした。
そこで山辺之大鶙を遣わして、その鳥を捕まえさせた。
この人はその鵠を追って木国 から針間国 に至り、また追って稲羽国 を越え、旦波国 、多遅麻国 に至り、東の方に追い廻って近淡海国 に至り、三野国 を越え、尾張国 を伝って科野国 に追い、遂に高志国 に追い至り、和那美 の水門に網を張り、その鳥を捕まえて献上した。それでその水門を名付けて和那美の水門という。
またその鳥を見れば物を言うと思っていたが、物を言うことは無かった。それで天皇は落胆し、寝ていた時に夢を見て、「我が宮を天皇の
御舎 のように造れば、御子は必ず物を言うであろう」と教えられた。
太占 で占って何れの神の御心かを求めると、出雲の大神の御心であることがわかった。
それでその御子に大神の宮を参拝させるために遣わそうとする時に、誰を副えるかを占った。すると曙立王が占いに当たった。
それで曙立王に命じて、誓約 を述べさせて「この大神を参拝することにより、誠に験 があるのであれば、この鷺巣池 の樹に住む鷺よ。誓約のままに落ちよ」と。誓約したその鷺は地に堕ちて死んだ。
また「誓約によって生きよ」と述べると生き返った。
また甜白檮之前 にある葉広熊白檮 を誓約によって枯らし、また誓約によって生き返らせた。
そこでその曙立王に名を賜って倭者師木登美豊朝倉曙立王という。
曙立王と菟上王の二王を御子に副えて遣わす時に占って、「那良戸 を行くと、足や目の不自由な人に出会って不吉だろう。大坂戸 を行くと、これも足や目の不自由な人に出会って不吉だろう。ただ木戸 は縁起が良い」と。到着する土地ごとに品遅部 を定めた。
出雲に至り、大神の参拝を終えて帰還する時、肥河 の中に黒巣橋 を作り、仮宮を造って御子を迎えた。
出雲国造の祖、名は岐比佐都美が青葉が茂る山のように飾ってその河下に立てた。
大御食を献上する時に御子が言うには「この河下の青葉の山のようなものは、山に見えるが山ではない。もしや出雲の石𥑎之曽宮 にいらっしゃる葦原色許男大神を斎く祝 の祭場ではないか」と。
そこでお供に遣わされた王達は、聞いて喜び、見て喜んだ。
御子は檳榔 の長穂宮 にて、駅使 を使って天皇に報告した。その御子は肥長比売と一夜を共にした。ところがその美人を密かに覗くと蛇だった。それで恐れて逃げた。
【古事記 中巻 垂仁天皇段】
肥長比売は悲しんで、海原を照らして船で追いかけた。
それを見てますます恐れて、山の撓りから船を引き越して、逃げ上って行った。
そして復命して「大神を参拝したので、大御子は物をおっしゃるようになりました。それで帰って参りました」と。
天皇は歓喜して、すぐに菟上王を返して神の宮を造らせた。
そして天皇は、その御子にちなんで鳥取部 ・鳥甘部 ・品遅部 ・大湯坐 ・若湯坐 を定めた。
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